違和感のようなもの NOZZE vol.5 五代さん【6】
ある日、
「ニュース見た? 自分の会社ながら、情けないわ…」
というメールが五代さんから届きました。
なんのことかわからなかったのですが、家に帰ってニュースを見ると、五代さんの会社の不祥事が報道されていました。
ゼネコンってなんだかんだある業界だし(偏見?)、五代さんの会社の不祥事は過去にもニュースで見た記憶があるので、それほど深刻な問題ではなさそうに思えましたが、「会社が情けない」という五代さんって、真面目で愛社精神が強い人なんだなーというのが、このときのまりもの感想でした。
その数日後、五代さんから「不祥事をうけて、管理職研修が実施されることになって、来週から2週間東京出張になった」という連絡が来ました。
2週間かー。
会えないのはさみしいけど、まあ2週間だし、仕事だししょうがない。
3週間後のクリスマスには戻ってこれそうだし。
出張に出かける直前の週末、デートをしました。
五代さんが行きたがったモーターショーを見に行って、その後はまりもが行きたかった高層ビルの展望台へ。
五代さんは、高いところは苦手、といいながらも付き合ってくれて、展望台のカフェでお茶を飲んでいると、五代さんの携帯に着信が。
「ああ、先だってはありがとうございました。え、もう見つかりました? 予定がねえ、ちょっとしばらく行けないんですよ。ほら、うちの会社不祥事があったじゃないですか。あ、はい。ニュースにもなってるんですけどね、不祥事があって。それで、研修で、しばらく東京に行くことになって。ちょっと先の予定が立てられないんで、戻ったらこちらから連絡します」
電話を切った五代さんは、「やるなー。もう見つけたか」と言って笑いました。
何の話?と聞くと、中古車屋さんに行って、欲しい車種のベンツを探してもらっていたらしく、走行距離とか色とか年式とかいろいろ細かく注文つけたのに、思いがけず短期間で見つかったとのことでした。
このとき、電話で話していた五代さんの口調に、なんか違和感のようなものを感じたのですよね。
ちょっと芝居がかった感じと言うか。「ほら、うちの会社不祥事があったじゃないですか」と急に言われても、中古車屋さんもそんなこと知らないだろう、とか。
けれど、それはかすかな違和感でした。
それで、東京から戻ってきて車を見に行くときには、一緒に行きたいなー、と思っていたのでした。
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