デートしてそれから NOZZE vol.3 三鷹さん【4】
三鷹さんとは、誘われるままに何度かデートしました。
映画を観たり、食事に行ったり、紅葉を見に行ったり。
気になる(悪い意味で)ことがないわけではないのですが、いい人だし、誘ってくれるし、という感じで3回ほどデートを重ねていました。
▼気になること
気になる点というのは、やっぱり、警察犬みたいな歩き方が落ち着かない、ということ。
そして、好きな本も映画も、その感想も直球過ぎる…。
小さなことですが、この人と付き合って結婚したら、もう一生、マイナーだけど好きな映画について語り合ったり、美術館を一緒にまわったり、というデートはできないんだなあ、と思うとちょっとしんみりしました…。
けれど、なんとなく、このままデートして、つきあって、もしかして結婚するのかなあ、とも思っていたのでした。
だっていい人だし、決定的に嫌なところはないし、誘ってくれるし。
この「いい人」というのは、打算、というか人の目を意識していました。
以前にも書きましたが、まりもが婚活をはじめたきっかけは失恋でした。
そして「新たな恋愛で失恋から立ち直りたい」という思いが、婚活の原動力になっていました。
けれど本当は、失恋した相手のことを忘れられず、目の前の新しい相手と恋愛するような心理状態ではなかったのです。
そこにはただ、新しい誰かに愛されることで、自分は魅力的で市場価値のある人間だと実感したい、という身勝手な欲望だけがあったのです。
だから、その「新しい誰か」というのは、自分の感覚がしっくりくる人、ではなくて、高年収で安定した職業であったり、爽やかな外見であったり、有名大卒の学歴であったり、婚約者として紹介したら、周りの人に賞賛されたり、家族が喜んで安心しそうな人、であることが望ましかったのです。
だから、当時のまりもにとって、三鷹さんのデートの誘いを断る理由はないし、早々にお付き合いを申し込まれて、プロポーズされて…となれば、結婚していたかも、と思います。
今となっては、お互いのため、そうならなくてよかった、と思いますが。
なぜ、そうならなかったのかというと。
たしか3回目のデートで紅葉を見に行ったあと、いつものように三鷹さんから
「今日はありがとうございました。次は○日に○○に行ってみませんか?」
という次回のお誘いメールがすぐに来るものだと思っていたら、来なかったのです(自意識過剰)。
紅葉デートでは、とくに険悪になるような場面もなかったので、ほかに並行してやりとりされている方がいたのでしょうか。
その後、お互い特にやりとりがないまま、半年ほど経ったころ、
「お久しぶりです。以前、NOZZEでやりとりさせていただいていた三鷹です。お元気ですか?」
というような連絡が来ました。
並行して進めていた方と、うまくいかなかったのでしょうか…。
お久しぶりメールをもらったとき、まりももフリーだったので、一度だけ再会したのですが、お会いして話してみると、
「ああ、そうだった。こういう感じで、本の好みとか、感想とか、全然合わないんだった…」
と実感して、それが三鷹さんとの最後のデートとなったのでした。
「合わない」ということについて、もう少し書くと、本の好みが違っていること自体は些細なことだし、どちらでもいいのですが、「違っている」ことを伝えられない空気感があって、それはたぶん三鷹さんのせいではなくて、まりもが勝手にそう振舞ってしまうのだけれど、借り物の自分のようで、なんかずっと居心地が悪かったのです。
たぶんそれもまた「合わない」ということで、半年振りに合って実感したのはそういうことでした。
そして、お会いしていなかった半年の間に、まりもも失恋から立ち直り、やっと目の前のお相手と向き合って、自分の価値観で判断できたのだと思います。
三鷹さんが価値観のあう、よいお相手とめぐり会われていたらいいなと思います。