婚活は辞めました

婚活を辞めた人の日記です。

match.com ことはじめ⑤ はじまりのおわり

さて、にわかに露出狂疑惑が持ち上がった辰村さんですが、まりもは予定通りお花(梅)見デートに出かけました。まあ、99%露出狂ではなく、ものぐさな人なだけだろうと思いましたしね…。

この日のデートでも、辰村さんの印象は、おおらか、にこやか、さわやか。

「まりもさんて白が似合うね」(その日白いコートを着ていた)と褒め言葉も欠かしません。

ただ、プロフィール写真の件を知っているせいか、この笑顔の下にはどんな心が隠されているんだろう、となんだか薄ら寒いような気持ちになるのでした。

そして、会話をしながら庭園を歩くうち、辰村さんってよく言えばおおらかだけど、繊細な優しさはない、というか、もしかすると細やかな感情自体がないのでは(失礼)、と思えてきました。

辰村さんが親切ではないわけではないのです。むしろレディファーストで、階段を上がるときはエスコートしてくれたり、スマートにドアを開けてくれたり、容姿だけでなく、服装や性格を褒めてくれたり。けれど、その優しさはどこか表面的で、形式的なもののように感じられるのでした。

たとえば、梅の木と木の間の狭い隙間を通り抜けようとしたとき。そこは一応、道にはなっていたのですが、両側から梅の木が枝を広げ、標準的な体格の人が一人通るのがやっとの狭さ。大柄な辰村さんは、ただでさえ道幅いっぱいなのに、ダウンジャケットのポケットに両手を突っ込んで、ふんぞり返ったまま進むので余計に横幅が広がって、花をつけた梅の枝にみしみしとあたっています。気がつかないわけがないと思うのに、そのまま無理矢理進むので、梅の枝はしなり、辰村さんが通り抜けた瞬間に鞭のようにまりもに直撃(それも両方から…)。コートの上からなので、大して痛くはないものの、しなった枝の間を無理矢理突破したら、その後うしろがどうなっているのか想像しないのでしょうか。そして何より梅がかわいそうです。枝が折れたり、花が散ったりしてしまうかもしれないのに><

その狭い道を歩いた時間はほんの僅か、1分にも満たない間でしたが、辰村さんの後ろを歩きながら考えたことは、その後の婚活にもずっとつきまとう、まりもにとっての婚活のメインテーマとも言えるものでした。

そのとき考えていたのはこんなことです。

ひとつは、当たり前のことだけれど、まだ辰村さんのことを何も知らないんだということ。メールをして顔を見て会話をして、少しわかった気になっていたけれど、それまで自分と全く接点のない、自分のバックグラウンドを全く知らない相手に対して、嘘をついたり、表面上は誠実に振舞うことは(少しの間であれば)簡単だろういうこと。

そしてもうひとつは、私は今、すごく居心地が悪いな、ということ。梅が傷むから、ポケットから手を出してもっと気をつけて歩いて、と一言言えばいいだけなのに、この人の前ではなぜか萎縮してしまって言えない。私は辰村さんの前では自分らしく振舞えないと感じました。まだ知り合って間もないから、というような理由ではなくて、この人とは感覚が大きく違うし、おそらくは違うことを尊重しあうことはできずに、自分の気持ちを殺してしまうことになるだろうと。

 

辰村さんとはその日、庭園を散歩した後、ご飯を食べながらお話しました。表面上は和やかあったけれど、ちょっと上滑りの会話でもありました。

その後、辰村さんが相次ぐ海外出張で多忙になったこともあって疎遠になり、やりとりが途絶えました。まりもは正直ほっとしました。

こうして婚活最初の出会いは終わりました。